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2014年5月31日() 大小ふたつのウラベニガサ属
 先日スギ林のシイタケほだ場で採取したPluteus(ウラベニガサ属)の検鏡結果を並べてみた。上段は大きなタイプ、下段は小さなタイプのPluteusだ。小さなタイプ(a', b')の胞子(c')の方が大きなタイプ(a, b)の胞子(c)よりも心持ち大きい。大きなタイプの側シスチジアは出現頻度も高く、大きくて厚膜だ(d, e)。一方、小さなタイプの側シスチジアは出現頻度が低く、小さくて薄膜だ(d', e')。大きなタイプのカサ表皮は菌糸が平行気味に並ぶが(f)、小さなタイプの表皮細胞は、並列気味のものもあるが、多くは立ち上がっている(f')。
 小さなタイプのPluteusのカサ表面をみると、先日取り上げたゴッツイPluteusと似通っているが(雑記2014.5.23)ちょっと違うようだ。このきのこはとても華奢で、しかも柄の様子がまるで異なり、カサ表皮の構造も少し違う。昨年および一昨年にも似たようなきのこを観察し、東京のHさんから貴重なコメントをいただいている(雑記2013.6.13同2012.6.9同2012.6.8)。
 上段の大きなタイプのPluteusはいわゆるウラベニガサとしてよいのだろう。
 
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 連日夏のように暑い日が続き庭の草の伸びも早い。刈り払い機の使用頻度が高くなった。


2014年5月30日(金) 自宅の庭に出たきのこ
 昨日の朝、庭に出てみるとあちこちにいろいろなきのこが出ていた。遠目にも鮮やかだったのがベニヒダタケ(a, b)。畑からはコガサタケ属(c, d)、落ち葉の中からはフミヅキタケ属(e, f)、庭木の脇からはナヨタケ属(g, h)、畑の籾殻からはケコガサタケ属(i, j)などがみられた。
 馬糞堆から出るヒトヨタケの仲間は暗いうちに成熟し、明るくなる頃には一気に萎れてしまう。昨日も今朝も、やや明るくなるのを待ってカメラを持って出ていくとすでにすっかり崩れていた。実験区のアンモニア環境と籾殻環境からはまだきのこはなにひとつ出ていない。
 一方川内村ではきのこの発生はまだほとんど見られず、昨日もカンムリタケばかりがやけに元気がよかった。すでにいわき市はじめ周辺ではカンムリタケはすっかり終わっているが、川内村では今が最盛期らしく、5月20日に見たときよりずっと大きくなっていた(雑記2014.5.20)。
 
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 昼前はチェーンソー2台の分解整備にかなりの時間をとられてしまった。刃の目立ても同時に行いながら、径35〜40cmの丸木を8本ほど切り出した。Husqvarna機はいまだ不調のまま。


2014年5月29日(木) 新舞子海浜公園のアセタケ
 新舞子浜に沿った公園にケシボウズタケの様子を見に行ったが、前年度のミイラだけしか見あたらなかった。今年の幼菌はまだ発生していない様子だった。周辺をよく見回すと、砂の中に頭だけ少し出したきのこがいくつもあった(a, b)。
 掘り出してみると意外に長い柄がでてきた(c, d)。どうやらアセタケの仲間らしい。縁シスチジアの有無ははっきりしないが、ヒダをスライドグラスに寝かせて縁を見た限りでは、側シスチジアと変わらない姿形だった。側シスチジアは厚膜で先端にクリスタル状の結晶を付着させている。
 どこかで見たような記憶があった。か細い記憶の糸をたどってみると、一昨年初冬にやはり新舞子公園でみたきのこだった(雑記2012.11.30)。アセタケの中でも胞子が特異な形をしている。ということは、このきのこもまたスナジアセタケなのかもしれない。
 
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 この二ヶ月ほどの間、不思議とイノシシの被害が全くない。周辺の集落でも石森山でもイノシシの掘り返した跡が見られない。いわき市に転居して以降、これほどの長期間被害がないのは初めてだ。いずれにせよありがたいことだ。馬糞堆からヒトヨタケの仲間が出始めた。


2014年5月28日(水) 覚書:こんにゃくの花のこと
 今日の雑記はきのことは全く関係ないが、自分たちにとって印象的だったので画像をメモとして残しておくことにした。自宅の庭にこんにゃくの花が開花し始めたのは5月の上旬だったが、仏焔苞がよく開いて付属体の下部に尾花と雌花がつき、最終的に花としてすっかり成熟したのは5月の24日過ぎだった。世間で言われるような臭い匂いはあまり感じなかった。
 5月21日頃には強い風雨に見舞われ、庭の花や樹木の枝がかなり折れたが、こんにゃくの花は健在だった。最終的に花の部分の寸法は、大きな方で65cm(背丈100cm超)、小さな方で40cmに及んだ。24日に大きな方の花の仏焔苞の一部を切り開いて撮影した(j〜l)。25日午後には付属体がしなだれて折れ曲がった
 
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(b) 5/18
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(c) 5/14
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(d) 5/18
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(f) 5/20
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(g) 5/20
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(k) 5/24
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(l) 5/24
(a) 5月14日、(b) 5月18日、(c) 5月14日、(d) 5月18日、(e) 5月20日、(f) 5月20日:雄花の下に雌花も見える、(g) 5月20日:雄花、(h) 5月20日:上から覗いた雌花、(i) 5月23日:雄花が開花した、(j) 5月24日:仏焔苞を切り開いた、(k) 5月24日:付属体と雄花の境界部、(l) 5月24日:雄花と雌花の境界部


2014年5月27日(火) 適度に湿った場所では
 近くのスギ林にある古いシイタケほだ場に行ってみた。この放棄されたほだ場は沢沿いのスギ林にあって、いつもほどよい湿気に包まれている。前日の石森山とは対照的に多くのキノコが顔をだしていた。それらのうちの一部を撮影した。
 ヒメスギタケはすっかり成長して大きくなっていた(a)。ウラベニガサ属が数種(b, c, g)、ツエタケ属もいくつか見られた(d)。材上からでるコガサタケ属や(e)、ナヨタケ属も数種見られた(f)。
 昨日の今日だが、カバイロチャワンタケは成熟した子実体もできはじめた(h)。材上生のチャワンタケは他にも見られた(i)。地上生のチャワンタケも大きなものから(j)、小さいが鮮やかな子実体まで出ていた(k)。キノコではないが、真っ白な変形菌がやたらに目立った(l)。
 
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2014年5月26日(月) 相変わらず成長の遅いカバイロチャワンタケ属
 そろそろ子実層が完成しているのではないかと思って、採取したてのカバイロチャワンタケの仲間を顕微鏡で覗いてみた(a)。胞子の入った子嚢がとても少ない(b)。メルツァー試薬で子実層の上半部が青みを帯びた(c, d)。糸状の側糸や胞子の油球はわかるが、胞子の表面模様やサイズ等はよくわからない。もっと完熟するまで待ってから検鏡する必要がある。
 この仲間のチャワンタケは一般に托実質が厚く、弾力があってしっかりしている。そして、托外皮が子実層状のきれいな構造をしている(e)(雑記2012.5.25)。
 子実層や子実下層を覗いていて、ふとこの仲間では鈎状構造はどのように見えるのだろうかと思った(同2014.5.22)。慎重に子実層をばらして基部付近をみたが、鈎状構造は捉えられなかった(f)。倍率を上げても結果は変わらない。他の場所や別の子実体でも試みたがやはり、鈎状構造は見つけられなかった。
 
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  石森山にはきのこ少ない
 昨日近くの石森山を散策してみた。きのこの姿がほとんど見られない。アオキオチバタケは必ずあるだろうと高をくくっていたのだが、これまた不思議なことに全く見られなかった。であったのは、スギタケ(g)、フミヅキタケ(h, i)、モリノカレバタケ(j)、ホコリタケの仲間(k)、クロノボリリュウタケ(l)くらいのものだった。真夏のような熱い一日だった。
 
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2014年5月25日() 今年初のテングタケ属菌
 何日かぶりに海辺の寺社林を歩いてみた。アカマツとコナラの混交林で、1メートル四方の間に10数本のAmanita(テングタケ属)がでていた。カサ表面には黄色の微細な粒が付着し、早落性のツバの上面は淡黄色で裏は薄黄〜薄茶色、ツボは浅く類球形をしている(d)。子ヒダの後端は切型ではない(e)。カサ表皮は繊維状で容易に剥離し、溝線は無さそうだ。胞子はアミロイド(f)。
 保育社図鑑に従えば、マツカサモドキ亜属のタマゴテングタケ節に落ちる。さらにタマゴテングタケ節の検索表をたどるとクロコタマゴテングタケに落ちる。

 なお、この付近にはキンランが多数自生していてちょうど今の時期花を咲かせ始めている。よくぞ盗掘されずにこれだけ多数の株が残っているものだ。ヒロハシデチチタケも出始めた。
 

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 先日の雑記(2014.5.23)で取り上げたウラベニガサ属のきのこ(g)についての補足(h〜l)。乾燥標本からシスチジアとカサ表皮の組織を再確認した。いずれも3%KOHで封入したが、シスチジアについては薄膜で無色(h〜j)、カサ表皮の組織については薄膜で黒い色を帯びている(k, l)。


2014年5月24日() 水封とメルツァーでの子嚢先端の見え方
 先日仁井田川上流の林道脇で採取したホオの菌核菌(a〜c)を改めて顕微鏡で覗いてみた。見ていると間欠的に多量の胞子を吹き出すので、すぐ傍らに置いたカバーグラスにはたちまち大量の胞子が付着した(d)。
 子実層を含む面で薄切りにしてプレパラートを作った。最初に水道水で封入して見ると、子嚢先端は薄膜で蓋があるかのようにみえる(e)。この写真だけ見せられたら、チャワンタケ属の子実層のようにしか見えない。
 ところが、メルツァー試薬で封入して見たとたんに、子嚢先端は厚膜でアミロイドの頂孔になっていることがわかる(f)。いかにもズキンタケ属の子嚢といったところだ。昨日取り上げた子嚢菌(雑記2014.5.22)と違って、頂孔がアミロイドのため明瞭に筒状の孔の存在がわかるので、フロキシンで染めるまでもない。
 
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 念のためにKOHでバラした子嚢部をフロキシンで染めてみたが、やはり頂孔の部分はわかりにくい。またクロージャー (鈎状構造)は比較的捉えやすい。


2014年5月23日(金) やけにゴッツイPluteus
 5月19日に近場のシイタケほだ場で出会ったPluteus(ウラベニガサ属)と思われるきのこを調べてみた(a〜c)。カサ表面の中心部にはシワと斑があり、柄には縦に顕著な条線があって基部は膨らんでいる。縦切りにしてみると、ヒダの付き方は上生ないし幅の狭い湾生のようだ(d)。
 胞子を見るといかにもPluteusを感じさせる(e)。メルツァーで封入すると非アミロイドで、水封のときとほとんど変わりない(f)。ヒダには縁にも側にも薄膜のシスチジアがあり、ヒダ実質は逆散開型をしている(g, h)。縁シスチジア(i)と側シスチジア(j)をフロキシンで染めてみた。カサ表皮には黒みを帯びた短い菌糸が柵状ないし子実層状に並んでいる(k, l)。やけにゴツいので当初Pluteusとは思わなかった。保育社図鑑によれば、ヒメベニヒダタケ節のきのこと思われる。
 なお、5月20日の雑記でウラベニガサ属としたきのこはオキナタケ科のようだ。東京都のHさんからの指摘で気づいた。おくればせながら、ご指摘ありがとうございます。
 
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2014年5月22日(木) 子嚢菌の鈎状構造(crozier, crosier, uncinulum)
 川内村で採取してきた水生子嚢菌(a)を顕微鏡で覗いて遊んだ(雑記2014.5.20)。子実体を縦切りして(b)、その上部表面に薄く広がる子実層の部分を薄切りして、まず水道水(c, d)とメルツァー試薬(e, f)で封入した。子嚢は非アミロイド。
 水道水で封入してみると、子嚢先端は薄膜で蓋があるかのように見える(d)。一方、メルツァー試薬では先端はやや厚膜になっているようにも見えるが、今一つはっきりしない(e, f)。もし子嚢先端が薄膜ならば(蓋付きの)チャワンタケ属、厚膜ならば(孔をもつ)ズキンタケ属となり、属レベルで別の仲間となる。
 そこでフロキシンで染めて3%KOHで封入して見た(g〜l)。すると子嚢先端が厚膜であることが一目瞭然となった(h, i)。先端の厚膜部に筒状の孔があると想定されるのだが、いまひとつ判然としない。状況証拠からはPeziza(チャワンタケ属)ではなくLeotia(ズキンタケ属)のようだ。2009年5月にチャワンタケとして雑記に載せたきのこは、今回の子嚢菌と同一種の可能性が高い。
 
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 久しぶりにクロージャー(crozier)を確認してみることにした(雑記2009.5.10同2009.2.5)。クロージャーは鈎状構造とか錫杖とかフックなどとも称され、子嚢菌の造嚢糸に特異的な構造だ。形こそ担子菌のクランプ(かすがい構造)と似ているが、由来も出現部位も異なる。
 子実層を十分によくバラせば楽に観察できるが(i, j, k)、厚く重なった状態では確認することが難しい(h, l)。担子菌のクランプ同様、いちどは自分の目で直接見ておきたいものだ。


2014年5月21日(水) 庭に馬糞堆環境を設置した
 昨日60kmほど離れた小野町のサラブレッド調教センターまで行って馬糞をもらってきた。昨年は馬糞堆肥やら比較的新しい馬糞をもらったが(雑記2013.5.29同2013.5.21)、昨日は古い馬糞をもらってきた。同じ容積でも古い馬糞は思いの外重かった。
 軽トラに馬糞を積んで帰宅してからが大変だった。昨年はレンタルした軽ダンプだったので、馬糞を降ろすのは簡単だったが、ことしはダンプではなく普通の軽トラだ。おまけに新しい馬糞ではなかったこともあり、密度が高く粘るので荷台から降ろすのに難儀した。
 
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 これまでに設定済みのアンモニア環境、籾殻環境に加えて新たに(古い)馬糞環境が整った。今日は朝から強い雨、従来ならこの雨が3時間も続けば確実に雨漏りが始まる。先日雨漏り対策を施した屋根の効果はどうだろう? 雨漏りが始まらなければよいのだが・・・


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