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乙次郎林道がすっかり整備されていた | |||||||
きのこがほとんど見られないので、気分転換に乙次郎林道経由で乙次郎部落に入ってみた。現在乙次郎部落に入るなら木戸川林道を使えば都会のファミリーカーでも気楽に行かれる。木戸川ダムの工事に伴って立派な広い舗装道路が続いているからだ。 かつて乙次郎部落に入るには乙次郎林道しかなかった。この林道は3.11の大震災以降荒れ放題になっていた。2012年以降何度か試みたが、多くは恐ろしい思いをしながら戻ってきた(雑記2012.8.11、同2012.8.31、同2012.11.16、etc.)。全線を走行できたのはようやく2013年の初冬のことだった(同2013.11.18)。その後も長いこと荒れたまま放置されていた。 今回軽自動車アルトで入ってみたが、深く抉れた路面には砂利が敷かれ、崩壊した路肩は補強されていた。これなら普通の小型車でも安心して走行できそうだ。ただし、林道の常で、未舗装の細い山道が続くので、対向車があればいずれかが長いバックを強いられる。 この林道は沢沿いに道が走り、きのこ観察には非常によい森林が続いている(c)。乙次郎林道から派生する林道は相変わらず大部分が通行止めや進入禁止となっていた(d)。2012年夏にバリケードがあった場所(f)は、標識も左右にどけられて(e)、安心して通れる路面になっていた。 |
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雨降りの効果はまだまだ | |||||||||
多少は雨も降ったし少しは何かきのこが出ているのではあるまいかと思って、近くの放置されたシイタケホダ場を覗いてみた。まずオオシトネタケやカバイロチャワンタケなどの子嚢菌は大きく育つことなく、小さいまま滅びてしまったようだ。一方、担子菌に関しては常連さんばかりが顔を見せてくれる。ヒメスギタケ(a, b)、ウラベニガサの仲間(c, d)、フサヒメホウキタケ(e, f)、ヒメカバイロタケなどがまだよく出ている。属もよくわからないが、小さなきのこも随所に見られる(g, h)。公園のウッドチップには何もでていない。 今朝は実に久しぶりに雨らしい雨が降っている。このような雨は数十日ぶりのことだ。 |
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荷物のダンボール詰がかなり進んできたが、本を収める小型ダンボールが20枚ほど不足してきた。まだ、きのこや菌類関係の文献は全く荷造りしていない。これらの文献だけでもダンボール20枚は必要になりそうだ。あぁ〜面倒くさい。 | |||||||||
あと10年は人が暮らせそうな家屋だが | |||||||
今の家屋で生活できるのも残り三週間弱となった。この三年半ほど暮らしてみて感じたことは、古い日本家屋は思いの外しっかり作られているということだ。3.11(2011年)の震災で瓦が落ちたり、排水管に損傷が生じたり、雨漏りが発生したが、若干の修理でほぼ修復された。この間の経過を振り返ってみると、あと10年は暮らすに困らないように思える。 現在のいわき市では、仮設住宅や借り上げ住宅に住む原発避難者による新築ラッシュが続いており、すさまじい土地バブルが起こっている。売れるのは更地。これが借家人を追い出したい悪魔の誘惑となる。古い家屋は震災でたいていは損傷を受けている。更地にするのは簡単だ。家が今にも壊れるから解体する必要があるとして、契約更新を拒否すればよい。いちいち借家人の事情など考慮していたら儲けのチャンスは失われてしまう。 |
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ここを去る前に現在の家屋と庭、自宅前の田圃の姿などを記録しておくことにした。また、今年は庭の梅にことのほか沢山の実がついた。庭の山椒も今年はよく実をつけた。 | |||||||
まるで非アミロイドのように見えてしまう | |||||||
先日ミズベノニセズキンタケについてのメモを記したが、このきのこの子嚢を検鏡したとき、非アミロイドと見誤りそうな事例を気まぐれにいくつか取り上げてみた。 やや劣化したものや濃度が薄すぎるメルツァー試薬で直接封入した場合、ときとして子嚢先端が全く変色しないかのように見えることがある(a, a')。また、濃い青色フィルターを通して見た時、子嚢先端が青色に染まっていたとしても、それがとてもわかりにくいことがある(b, b')。さらにメルツァー試薬の色が濃すぎるからといって(c)、エタノールで洗ってしまうと更にわかりにくくなることもある(c')。これらはいずれも対物40倍レンズまでの倍率で見たものだ。 子嚢先端のアミロイド反応だけを見るのが目的なら、何も薄片を切り出す必要はない。子嚢の一部をピンセットなどで摘み取って、それを押しつぶしてメルツァー試薬で封入すればよい。ただ、そのままでは押しつぶしは意外とうまくいかない。予めKOHで組織をときほぐしたのち水洗いしてからメルツァー試薬で封入すると、一般にアミロイド反応はより鮮明になる。先日の画像は、KOHによる前処理をしたものを対物油浸100倍レンズでみたものだ。 |
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本当はアミロイドであるにもかかわらず、低倍率でちょっと見た様子から非アミロイドであると思い込んでしまうケースもきっとあるに違いない。 | |||||||
ヒロハシデチチタケだけしかなかった! | |||||||
ずいぶん長いこと雨らしい雨がなかったが、今朝は実に久しぶりに雨が降っている。 昨日の朝おそらく何もないだろうと思いつつ、久しぶりに軽い運動のつもりでいわき公園を歩いた。例年なら多数のテングタケ類やアイセンボンタケ(or ヒカゲシビレタケ)などが見られるのだが、乾燥と「除染」のためきのこの姿は全く見られない。池縁のシデ樹下の斜面にヒロハシデチチタケが出ていたが(a, b)、多くは乾燥して干からびていた。 |
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カサを伏せて数時間、僅かに落ちた胞子をメルツァー試薬で封入してみた(c, d)。今年はじめて実体鏡の下でヒダ断面を切り出した(e)。つい最近まで指の痛みと硬直のため、実体鏡下での切り出しはできなかった。側シスチジアが多数見られる(e)。メルツァー試薬で封入して対物40倍にして見た(f)。画像は掲載しなかったが、シスチジア、担子器、傘表皮なども撮影した。 | |||||||
小さくても老菌:カンゾウタケ | |||||||
いわき市界隈では長いこと雨が降っていないため、どこもかしこもすっかり乾燥していて、きのこの姿は見られない。そこで、昨日北茨城市の平潟漁港の神社まで行ってみた。ここには、スダジイとタブノキの老木が多数ある。カンゾウタケは確実に出ているはずだと思った。 例年なら大きくて鮮やかな色を帯びたカンゾウタケが多数でているはずだが、今年はまるで様子が違っていた。大きく育ったものは少なく(a, b, d)、色もすっかりくすんでいた。幅5〜8cmほどの小さなものが目立ったが、この大きさですっかり老熟していた(e, f)。足元は予測通りカラカラに乾いていた。タブノキ上のマユハキタケは全く成長していない。 |
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最後の庭の草刈りをした。あと三週間でこの家から退去するのだから、今更草刈りなどせずともよいのだが、伸び放題の草を放置しておけば周辺の農家に迷惑をかけることになる。 | |||||||
引越に伴う事務手続き開始 | |
引越予定日まで三週間となった。家財の整理・処分に伴うゴミ等の処理は大方終えて、いよいよ荷造りを開始した。昨日は電気、水道、ガス、浄化槽、新聞、牛乳などの停止連絡をすませた。絹谷の集落にはお別れの挨拶を回覧板に載せてもらうことにした。 引越し業者に顕微鏡類を運んでもらうわけには行かないので、川口市から引っ越してきた時もそうだったが、これらは自分たちで運ぶことにした。メインのコンピュータやハードディスク、プロジェクタなども万一を考慮して、業者に依頼するのはやめた。したがって、これらの荷物はプリウスとアルトに積んで、二回に分けて転居先まで運んでいかねばならない。 ここでの生活も残りわずか。来週の後半には転出届や国民健保・年金、印鑑登録廃止など役所関係の手続きをせねばならない。 |
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再び「ミズベノニセズキンタケ」について | |||||||
山渓『日本のきのこ』、同 『フィールドブック きのこ』にはミズベノニセズキンタケという名称で水流に浸った細枝などから出る子嚢菌が紹介されている。そして学名にCudoniella clavus (Alb. et Schw.: Fr.) Dennisがあてられている。春から初夏にかけて日本のどこにでも見られかのように記されている。確かにこの時期に小川や小さな沢をジックリと観察すると、図鑑の写真とそっくり、あるいはよく似た子嚢菌が結構な頻度で見られる(a〜f)。 過去15年以上ゴールデンウイーク前後から6月の頃になると、各地でミズベノニセズキンタケと思われるきのこを採取してきた。写真(a〜f)は一昨日のものを含めてその一部だ。2000年頃まではこれらのきのこはCudoniella clavusだとばかり思っていた。たとえ顕微鏡で詳細に観察しても、山渓図鑑だけを見ている分には、何ら疑問点は生じない。 |
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ところが、保育社『原色 日本新菌類図鑑 II 』を見た途端に疑問が生じてくる。というのは、「子嚢頂孔はヨード反応陰性」(p.263)と記述されているからだ。これまでに観察した「ミズベノニセズキンタケ」と思われる子嚢菌のヨード反応はすべてアミロイド、すなわち子嚢頂孔はメルツァー試薬のもとで青色に変色した(雑記2003.5.7[追記]、同2006.5.15、同2008.5.8、等々)。先月末(6月28日)に採取した子実体(e, f)の子嚢頂孔もアミロイド反応を示していた(i〜k)。 ただ、はっきりしていることがいくつかある。これまで数十ヶ所の数百の子実体群の子嚢頂孔を検鏡した結果は、すべてがヨード反応陽性(アミロイド)であり、ヨード反応陰性(非アミロイド)のきのこは一点もなかった。また子嚢胞子のサイズも保育社図鑑にあるサイズ(10〜15×4〜5μm)ばかりではなく、これより20%ほど大きかったり小さかったりするものがざらにある。 |
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これは何を意味するのだろうか。もしC. clavusという子嚢菌の子嚢頂孔がアミロイドなら、保育社図鑑の記述が誤りということになる。また、C. clavusという子嚢菌の子嚢頂孔が非アミロイドなら、日本にはC. clavusという子嚢菌の存在は疑わしいことになる。しかし、Friesの時代にはメルツァー試薬はまだないから、原記載にアミロイドか否かの記述はないはずだ。 厳密には、ホロタイプ(もしあれば)等にあたるとともに、Friesによる原記載から、R. W. G. Dennisまでの変遷を論文上からも追いかけて検討しなくてはならないのだろうが、そういった分類学的な検証は非常に手がかかる上に面倒だ。それに、だいたいが分類学的再検討とか種の同定といったものにはいまやほとんど関心がない。 学名のC. clavusをあてるのが適切かどうかは別として、わが国で春〜初夏に発生する「ミズベノニセズキンタケ」の子嚢頂孔はほぼ大部分がアミロイド反応を示す。 |
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きのこがない! 雨不足か? | |
近場の神社仏閣や自然公園にきのこの姿がほとんど見られない。例年ならカンゾウタケやヒロハシデチチタケなどが出始める時期だ。しかし、このところは高温が続いているにもかかわらず、雨がほとんど降っていないせいか、カンゾウタケはたった一ヶ所に小さな幼菌がひとつだけ。ヒロハシデチチタケやキコガサタケ、ニガクリタケの姿は全く見当たらない。 少し本格的な雨が降るまではきのこの発生はお預け状態のようだ。雨が降るまではもっぱら引越準備作業に勤しめということか。使用頻度の低いモノから梱包開始だ。 |
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バッカクキンに体を乗っ取られたアリ | |||||||||||||
昨日国道六号線を経て飯舘村の「あいの沢」自然公園に行ってみた(a)。一体はすべて「立入禁止」区域となっていて、「除染」作業が休みとなる休日しか近寄れない(b)。 水芭蕉の終わった松混じりの小沢をみると(c)、カンムリタケがポツリポツリと散在していた(d)。キャンプ場や周辺の森はすっかり乾燥していて、昨年発生したカラスタケやニンギョウタケの乾燥姿が転がっていた。さらに「除染」作業に伴う灌木の伐採でとても歩きにくい。 ここに来た主目的は、コブガタアリタケ菌に侵されたアリがもがき苦しみながら前顎で枝に食らいついている姿を確認することだった。まず、コブガタアリタケの子実体を帯びたアリや(e)、そのコブガタアリタケがカビに侵されたものを見つけた(f)。昨年発生したものだろう。 ついで、まだ子実体はまったく発生していないが、明らかにコブガタアリタケの菌に侵されて前顎で枝に食らいついているアリの死骸をいくつか見つけた(g, h)。さらに注意深く見ていくと、生きたアリの断末魔の姿を見ることになった(i〜l)。枝にしがみついてすでに死んでいるアリの周囲を苦しそうに動きまわっているアリや(i〜lのピンぼけ姿)、枝に食らいついてその場からは動けなくなったが、苦しそうにもがいているアリ(i, jの左下のアリ)などが見つかった。 |
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残念ながら動画撮影のできるカメラを持っていなかったので、やむなくケータイ(ガラ携)の貧弱な動画機能を使って、苦しみ動きまわるアリと、食らいついた状態で苦しむアリの姿を撮影した→ピンぼけ動画:上記(i)〜(l)はピンぼけ動画と同じ場面の一カットだ。 ここは大規模「除染」の開始で、灌木はことごとく切り倒され、地肌は根こそぎ抉り取られ、川砂のような細かな砂利が敷き詰められ始めた。もはや自然公園の姿はない。今後しばらくはこの場所でキノコや虫草の発生はなさそうだ。もはやこの場所に行くことははないだろう。 |
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