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奥日光でもきのこほとんどなし | |||||||||||||
おそらく雨不足のためだろう、奥日光でもきのこの姿が非常に少ない。昨日かろうじて出会えたのはタモギタケ(a)、ヒラタケ(c)、マスタケ(e)くらいだった。そのタモギタケは車道脇の立ち枯れのハルニレ樹上に出ていた(b)。ヒラタケは草むらの材に出ていた(d)。マスタケは早くもバクサレはじめていた(f)。ヒロメノトガリアミガサタケはすでに干からびていた(g, h)。 昼前に戦場ヶ原を降りた。東照宮脇の白糸の滝周辺で柄の長いきのこに出会った。たぶん広義のツエタケの仲間なのだろうが胞子はまったくできていなかった(i, j)。さらに、これまで成長を続けていたミヤマトンビマイはカビに侵されて傷み始めていた(l)。 |
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奥日光の西ノ湖はますます水位が低くなり、湖底の大半が露出して「湖」ならぬ「水溜り」になってしまった(k)。この「水溜り」の面積は例年の「西ノ湖」1/10にも満たない。 | |||||||||||||
テングタケ属がようやく出てきた | |||||||||||||
近くの都市公園を散歩してみた。今年初めてテングタケ属にであった。アカハテングタケのようだ(a, b)。草むらをよく見ると、ベニタケ属のきのこも出ていた(c, d)。この仲間はごく一部の種を除いて、形態観察だけで種名にたどり着くのは困難なので、詳細な探索をすることはやめた。杉の球果や葉や枝などから小さな白色のホウライタケ属が多数出ていた(e, f)。 このホウライタケ属についてだけ、検鏡結果の一部を掲げた(g〜l)。胞子は非アミロイド(g, h)、シスチジアの有無はよくわからない。ヒダの縁を見てもそれらしい構造を見つけられない。担子器と同じくらいのサイズの細胞があるが、これがシスチジアなのか否かはっきりしない(i, j)。カサ表皮を切り出しても(k)、箒状の細胞はなく、こぶのあるこん棒状の細胞などから構成されている(l)。なお、組織にはクランプがある。保育社図鑑ではシワホウライタケ節に落ちるようだ。 |
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今日は天気が悪いので「クリンソウ騒ぎ」も少しは下火だろう。先週からちょうど一週間経過したから(雑記2016.6.3)、幻のきのこ探しに奥日光に入るにはちょうどよいのかもしれない。 | |||||||||||||
ミミナミハタケのようにみえたが・・・ | |||||||||||||
先日奥日光で採取したミミナミハタケ属のきのこ(a, b)についての覚書を残しておくことにした。一見柄がないかのように見えたが、材から掘り出してみると、捻じれた長い柄がでてきた(c, d)。柄下部の表面は白色の菌糸で覆われている(e)。胞子はアミロイド(f)。 ヒダを切り出してみたが(g)、シスチジアの類はなく、ヒダ実質は並列型で(h)、非アミロイド(i)。担子器には四つの胞子がつく(j)。菌糸にはクランプが豊富にある(k)。柄の表面には褐色の厚壁胞子はみられない(l)。 保育者「原色日本新菌類図鑑」に準拠して同定を試みた。胞子サイズからヒメオオギナミハタケではない。カサの基部に毛を密生しておらず、ヒダ実質が非アミロイドなので、イタチナミハタケでもなく、キツネナミハタケでもない。残るはミミナミハタケだが、柄の表面に褐色の厚壁胞子がみられない。したがって、ミミナミハタケでもない。 日本語で書かれた図鑑類にこういった形質状態のミミナミハタケ属についての記述は見当たらない。広く海外の文献類に目を通せば、種名にまで至ることができるのかもしれないが、少なくとも手元の図鑑や文献類からはこれ以上のことはわからない。 |
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昨夜実に久しぶりにわずかの雨が降った。雨量は大したことなく、今朝は止んでいる。 | |||||||||||||
シイタケほだ場も変わりなし | |||||||
関東地方は梅雨入りしたというが、一向に雨の降る気配はない。日光では今年五月の降水量は例年の六割しかないという。どこの公園も緑地もすっかり乾燥しきっている。近場のシイタケほだ場でも新たなきのこの発生は見られず、ウラベニガサの仲間(a〜d)とヒメスギタ(e, f)、ニガクリタケくらいしかみられない。硬質菌の仲間でも、ホウロクタケ、ダイダイタケ、カワラタケの三者だけは元気がよい。子嚢菌の姿はすっかり消えた。
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前日光林道ドライブ | |||||||
新聞やテレビで連日奥日光を取り上げているせいか、日光市内も首都圏やら東北からの観光客であふれている。観光バスもマイカーもとても多くて、東照宮からいろは坂を経て奥日光までの道は渋滞が慢性化している。自宅周辺でも県外車がやたらに目立つ。 新たなきのこ観察ポイントを探すために、著名な観光地を避けて前日光の林道を走り回った。随所で車を止めて、そこから数キロ歩くパターンの繰り返しとなった。朝のうちは車は非常に少なかったが、昼近くになると古峰ヶ原高原を中心に多くの車で賑わい始めた。 ずっと雨がなかったためだろうか。きのこの姿はほとんどなく、かろうじてヒラタケ(a, b)、ヌメリスギタケモドキ(c, d)、オオワライタケ(e)、キイロスッポンタケ(f)に出会った。きのここそなかったが、自宅から40Km圏でまたひとつ絶好の観察ポイントと思われる場所をみつけられた。 |
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胞子盤:対物40倍レンズと100倍レンズで | |||||||||||
ヒメアジロガサモドキと思われるキノコを採取したので顕微鏡でみたが、どの部分が胞子盤なのかわからないというメールをいただいた。顕微鏡はいわゆる学習用といわれるもので、油浸レンズはついておらず対物レンズは40倍までだとのこと。 担子菌の胞子は一般に小さい。40倍の対物レンズで胞子盤の有無を確認するのは慣れないと難しい(a, b)。先のヒメアジロガサモドキの胞子を油浸100倍対物レンズで見た画像が(c〜e)で、両者ともに青色の矢印で指した先が胞子盤だ。 胞子盤という用語は保育社『原色日本(新)菌類図鑑』には頻繁に出てくるが、胞子のどんな様子をいうのかについての説明はどこにもない。胞子盤という用語は英語のplageの訳で suprahiar depression, suprahilar disc, suprahilar spot などとも呼ばれているようだ。 いくつかの辞書なり解説書に当たってみた。(f)は「Dictionary of Fungi (9th.edition.)」、(g)は「Illustrated Dictionary of Mycology (旧版)」、(h)は「How to Identify Mushrooms to Genus III」、(i)はその日本語訳書「図解 きのこ鑑別法」、(j)は「北陸のきのこ図鑑」。 Dictionary of Fungi(f)はややわかりにくいが、Illustrated Dictionary(g)と北陸のきのこ図鑑(j)はとてもわかりやすい。How to Identify(h)とその訳本(i)は正確だがすぐには理解しにくい。 |
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今日は町内会の地区一斉清掃日。am7:00に軍手をして指定場所に集合する。 | |||||||||||
マルミノチャヒラタケ:シイタケほだ木上 | |||||||||||||
先日近くのシイタケほだ場で採取したマルミノチャヒラタケの検鏡結果。クリゲノチャヒラタケにはしばしば出会うが、マルミノチャヒラタケは久しぶりだ。今月は何度か出会った(a〜d)。 胞子紋はたっぷり落ちた。胞子は微棘を帯びた球形(e, f)。ヒダを一枚スライドグラスに寝かせ、フロキシンで染めて縁を見た(g)。倍率を上げると縁シスチジアが確認できた(h)。次いでヒダ数枚をまとめて切り出した(i)。ヒダの先端をみると確かに薄膜の縁シスチジアが見られる(j)。 ヒダの縁付近をピンセットでつまみ取り、フロキシンで染めてKOHで封入して押しつぶしてみた。縁シスチジアが染まり過ぎた状態でみえた(k)。組織にはクランプがある(l)。カサ表皮は平行菌糸被で、表面はすっかり胞子で覆われていた。 |
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昨日鬼怒川方面の緑地と公園を数か所歩いてみたが、どこもすっかり乾燥しきっていて、きのこの姿は全くなかった。今日はまた東京へ:ギリシア語およびラテン語の読書会。 | |||||||||||||
クリンソウ騒ぎの奥日光にて | |||||||||||||
朝、奥日光戦場ヶ原の赤沼駐車場に到着したのはam7:30。ほぼ満車状態で、am7:50発のバスは既に満席だった。臨時バスも出たが、立ち席も立錐の余地なし。そのほとんどが千手ヶ浜のクリンソウを見るための観光客だ。だから終点以外で下車する客はまばらだった。 本当はこの時期に奥日光には入りたくないのだが、悪いことに探索中のきのこの発生はクリンソウ騒ぎの時期と合致する。おまけに遠足の小学生がバスで大挙してやってきている。 問題のきのこには今回も出会えなかった。出会ったきのこといえば、ヒロメノトガリアミガサタケ(a, b)、タモギタケ(c, d)、ヌメリスギタケモドキ(e, f)、ミミナミハタケ属菌(g, h)、ヒラタケ(i)、オオワライタケ(k)といったところだった。ヒロメノトガリアミガサタケは年々発生数が減っている。ヌメリスギタケモドキはカサ径20cmを超える巨大なものが6〜7本束生していた(e)。 東照宮などのある二社一寺近くの杉並木ではミヤマトンビマイがかなり大きくなってきた(l)。 |
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今年初のベニタケ属二点 | |||||||||||||
宇都宮市の緑地帯を散歩したところ、ベニタケ属が二種類ほど出ていた(a, a')。先日泥まみれのものと干からびたものは見たが、実質的には今年初めてのベニタケ属菌となる。 それぞれ、ヒダの様子(b, b')、呈色反応(c, c')、胞子(d, d')、カサ表皮(e, e)を比較してみた。上段のキノコはヒダに子ヒダはなく、ヒダの縁側にY字形の分岐もない(b)。一方下段のキノコには子ヒダがあり、ヒダの縁側にはY字形の分岐がある(b')。両者ともに、カサ肉は白色で表皮ははがれやすく、柄は中空で表皮は白色から淡褐色。いずれもシスチジアはない。 呈色反応の結果は写真を見ての通りで、FeSO4とPhenolで異なる反応を示した(d, d')。胞子の表面模様はよく似ているが、下段のキノコの方が若干大きい(d, d')。カサ表皮は両者とも細い菌糸が絡み合っているようだが、下段のキノコの方がいくらか密集気味だ(e, e')。 このベニタケ属菌がどのような種名なのか、あるいは未報告種なのかは、上記のデータをもとに検索することになる。最近の分類ではこれにDNAデータが加わる。ベニタケ属のように形態的特徴の少ない種では分子データは非常に有効だが、形態的・化学的観察が間違っていたり曖昧ならば、その分子データは空中楼閣となる。基本は五感を総動員した観察だ。 |
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写真(f, f')はこれらのベニタケ属菌の近くにでていたノボリリュウタケで、これまた今シーズン初めてのであいだった。他にはネンドタケモドキの幼菌が目立ったくらいで、キノコの姿はいたって少ない。超激辛味噌ラーメンを食べたあと、午後は栃木県立博物館の学芸員室で過ごした。 | |||||||||||||
どこもキノコがほとんどない | |||||||||||
近くの都市公園を歩いてみたがキノコの姿はほとんどなく単なる散歩に終わった。かろうじてみられたのは干からびたヒロハシデチチタケとウスタケだけだった。 キノコが少ないのはシイタケほだ場でも同じだった。ホウロクタケ、ダイダイタケ、カワラタケばかりがやたらに目立つ。軟質菌ではヒメスギタケ(a)、ウラベニガサの仲間(b, c)、フミヅキタケ以外はとても少ない。ボロボロになったほだ木にマルミノチャヒラタケがよく出ていた(f〜i)。 マルミノチャヒラタケそっくりのキノコがボロボロの材からでていた(d, e)。よくみればヒダの様子が何となく違う(e, g)。さらに胞子紋は白色で、胞子は平滑で微イボのない類球形で、マルミノチャヒラタケの胞子とはまるで違う。どちらかといえばスギヒラタケなどに限りなく近い。材がスギかどうかは判然としない。しかし今ごろスギヒラタケが出るのだろうか。この他にも、杉の小枝や表皮、さらには地表からとても小さなチャワン型のきのこがでていた(j)。 |
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テレビで奥日光のクリンソウが見ごろを迎えたと報道していた。今週末から6月半ばころまでは恒例のクリンソウ騒ぎが始まってバスは大混雑することだろう。 | |||||||||||
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