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2016年2月20日() 再び Trichaptum or Irpex ?
 今月の4日に真岡市の井頭公園で採取したものの属名までも辿りつけずどうしたものかと思っていたキノコについての覚書。昨年11月4日の雑記で「Trichaptum(シハイタケ属) or Irpex(ウスバタケ属)」として未解決のキノコについて記したが、それに続く第二弾となる。ちなみに11月4日の雑記で取り上げたきのこはTrichaptumでもIrpexでもなく、ニクウスバタケ(Coriolus brevis)と判明したが、ここで取り上げたキノコは明らかにニクウスバタケとは異なる。
 二週間ほどいろいろな文献を繰ってああでもないこうでもないと迷っていたが、とりあえず現状のまま観察結果を略記して標本を保存することにした。白色腐朽菌で、キノコ自体はやや背着生を帯び、カサ表面の基部にだけわずかに毛があり、子実層托の部分は顕著な薄歯状で、子実体断面(e)にもとくにこれといった特徴はない。菌糸構造は二菌糸型で、原菌糸にはクランプがある(g, h)。胞子は楕円形のようだが成熟時のサイズなどは不明だ(j)。多くの薄歯をみたが、顕著なシスチジアは見られなかった(i)。似通った種としてはウスバシハイタケ(T. fuscoviolaceum)とコゴメウスバタケ(I. parvulus)などがあるが、これといった決定打がない。
 
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 昨日は日中かなり気温が上がった。庭の雪はほぼ消えたが、自宅前の市道では歩道の残雪が朝晩凍って怖い。夕方行ったやしおの湯の周辺もまだ雪景色のままだ。


2016年2月19日(金) ニクハリタケ or アラゲニクハリタケ?
 先日宇都宮市の鶴田緑地で採取したSteccherinumの仲間(a, b)を詳しくみると迷いが生じてきた(c)。帰宅後に採取した子実体の断面(d)をみて毛皮の下に濃褐色の薄層がないので2月9日の雑記にニクハリタケ(S. ochraceum)としてアップした(am4:30)。その後シスチジアの分布をみると針の先端付近にしかシスチジアが見られず(f)、形も紡錘形ではなく混紡形だったので(g, h)、雑記の記述をニクハリタケからアラゲニクハリタケに変更した(am8:30)。
 雑記の記述は現在もアラゲニクハリタケとなったままだが、これはどうも怪しいので「キノコのフォトアルバム」にはアラゲニクハリタケは掲載していない。ニクハリタケとすると、シスチジアの分布と形があまりにも違う。しかし、子実体断面を見る限りはアラゲニクハリタケではなさそうだ。さらに気になったのはクランプをもった原菌糸はあるにはあるが(j)、その頻度がとても低くクランプを見つけるのにはかなり根気がいる。やはり肉眼的な特徴の持つ意味合いは大きい(d)。このキノコはニクハリタケとするのが適切なのだろう。
 
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 再びケータイが使えるようになった(雑記2016.2.13)。基盤は無事、原因は電池の消耗だった。一週間弱の間ケータイが使えなかったわけだが、特に不便は全く感じなかった。


2016年2月18日(木) 近くのシイタケほだ場にて
 昨日は午前中に近くのシイタケほだ場に行ってみた。予想より近く、自宅からおよそ4Km、車で7〜8分だった。ここをじっくりと見て回るのは初めてだった。経営者のSさんと雑談をしたあと、すでに役割を終えてボロボロになった材を見て回った。キノコが多数ついていた。
 あちこちにセンボンクヌギタケが出ていた(a, b)。胞子はアミロイド(c)。今年は1月が暖かかったとはいえ寒い日光でこの時期に出ることに驚いた(雑記2005.3.9)。足下を見ると小さなキチャワンタケが群生していた(d)。ニクウスバタケは柔らかくいずれも新鮮だった(e, f)。
 しかしなんと言ってもボロボロのほだ木に最もよくみられたのは、ダイダイタケ(g〜i)とホウロクタケだった。材が途中で90度回転したのだろうか、面白い形のホウロクタケがあった(j, k)。また、幅が25cmを超える大きなホウロクタケが多数みられた(l)。
 
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 昨日は実に久しぶりにカサと柄をもったキノコのヒダやカサ表皮の切片を作った。寒い時期は持病が悪化して指先が思い通りに動かない。もどかしい思いをしながらの作業となった。今朝4:00の外気はマイナス6度、室内は2度だった。am6:00頃にはさらに2度ほど低くなる。


2016年2月17日(水) 乾き切ったニクウスバタケ
 真岡市の都市公園で切り株にすっかり乾燥しきった褐色のきのこがビッシリついていた(a)。虫に食われたらしくいたるところに粉塊状になった菌糸がついていた。子実層托の部分は針状ないし薄歯状で(b, c)、キノコの断面には特に異質の層はない(d)。菌糸構造は二菌糸型ないし三菌糸型で(d)、原菌糸にはクランプがある(f)。ニクウスバタケのようだ(雑記2015.12.21)。
 
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[八ヶ月ぶりのブレッドガーデン]
 昨日は早朝暗い内に日光市を出発して八溝山地の峠を越えていわき市に向かった。峠道は雪のため車線が非常に狭くなっていた。am9:00頃に友人宅に到着。1時間半ほど友人夫妻と歓談した後、小名浜のブレッドガーデンに向かった。自宅からいわき市のブレッドガーデンまでは片道175Km、一般道経由で3時間半から4時間。到着したのは開店1時間前。
 幸いにも先頭から三番目に並ぶことができた。しかし10分もしないうちにたちまち後ろには長い行列ができた。パンを購入して店から出ると、店の前には十数人が並んでいた。近くのスーパーに寄った後再びブレッドガーデンの前を通過したのは開店25分後だった。行列は消えていたがパンも消えていた。最後尾についた人はパンを買えたのだろうか・・・
 
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 帰路の途中、JR水郡線の無人駅「下野宮」に寄った。駅舎は地区の集会場を兼ねていた。


2016年2月16日(火) 初夏(2/14)の翌日(2/15)は激しい降雪
 14日の日曜日は全国的に初夏のような陽気となり、自宅周辺でも気温が高く夕方には庭の雪もほとんど消えた。翌15日の朝も比較的気温が高く暖かかった。午前中に日光市手岡のシイタケ原木栽培農家Sさん宅を訪問しほだ場での観察許可を得た。Sさんのシイタケほだ場は日光市板橋にあり、わが家から5Km弱、車で10数分の距離にある。
 昨日はam10:00頃からにわかに気温が下がりはじめ、やがて激しく雪が降り出した。洗濯物があったので慌てて帰宅すると、すぐに庭も樹もたちまち白くなった(a, b)。二階からみる風景も隣家の庭もすっかり雪景色に戻ってしまった(c, d)。幸いpm2:00過ぎには氷雨に変わった。夕方遠くのやしおの湯に行くと予想外に空いていた。周辺の樹木が霧氷のような雪景色だった。
 
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 今日はこれからいわき市へ向かって出発。友人宅に寄ってからブレッドガーデンで美味しいパンを買う予定(雑記2013.11.20)。東京世田谷区のベッカライ・ブロートハイムのパンとはさらにひと味違った深い味わいがある。特にブレッドガーデンのイギリスパンとクロワッサンは極上だ。


2016年2月15日(月) すっかり乾燥しきったエビウラタケ ケシワウロコタケ
 真岡市の都市公園で大型で薄っぺらい硬質菌に出会った(a, b)。裏面を見ると真っ黒で子実層托の形が管孔なのか皺なのかヒダなのか皆目わからない(c)。ただ、なんとなく膠質が乾燥しきってペシャンコになったかのようだった。乾燥したヒダキクラゲがちょうどこんな感じだ。
 帰宅して改めて裏面を見るとなにやら凸凹があるだけだったが(e)、キノコをしばらく水没させてからみると小さなイボが無数にひしめき合っているような姿になった(f)。きのこの断面についても乾燥状態(g)と水没後の状態(h)を確認した。明らかにゼラチン質の層がある。
 菌糸構造はちょっと見た限りでは、薄膜の原菌糸と厚膜の骨格菌糸があるかのように見える(i)。しかしよく見れば、どの菌糸にもクランプが見られる(j, k)。どうやら一菌糸型らしい。担子器や胞子は確認できなかったが、子実層を構成する菌糸とシスチジアらしきものは確認できる(l)。まちがいなくこれはエビウラタケ ケシワウロコタケだろう(雑記2016.1.21)。

 このキノコはエビウラタケではなく、ケシワウロコタケPunctularia strigosa-zonataだった。子実層托の写真(f)を見ればそれは一目瞭然なのだが、思い込みと初歩的ミスでエビウラタケと判断してしまった。情けない話だが勉強になった。ドキッときのこの竹しんじさんからのご指摘でそのことが分かった。2月15日の雑記にも修正を加えた。竹さん、ありがとうございました。ここに追加して修正します(2016.2.29)。
 

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 二日続けて遠くのやしおの湯へ行った。初夏のような陽気で東武日光駅周辺では雪がほとんどなくなった。でも、やしおの湯の周辺は未だに雪国だった。昨日は入浴客に西欧系の外国人が多かった。あらためて観光地なんだな〜ぁ、と思った。自宅の雪も急激に少なくなった。


2016年2月14日() 細い落枝についた背着生の小さなキノコ
 今朝は雨。このところ暖かな日が続き自宅の雪はかなり消えたが(k)、未だに顕微鏡室の前にはたっぷり雪が残っている(l)。その雪の上に、どこからか飛ばされてきた細い木の枝がいくつも落ちていた。その一つに背着生の茶褐色の小さな硬質菌が着いていた(a, b)。
 それらの内から最も大きな子実体を一つ枝から引きはがした(c, d)。わずかにできているカサの表面には白毛が密生している(c, e)。子実層托の部分は肉質の針になっている(d, f, g)。その針をみると、周囲には先端から基部までシスチジアが多数みられる(h, i)。シスチジアは紡錘形やら棍棒状で上半部には結晶が密集して着いている(i, j)。菌糸構造は一菌糸型。カサ毛被の下には特に濃色の層はみられない(g)。どうやらニクハリタケの若い子実体のようだ。
 
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 日光には羊羹の老舗が多い。羊羹は好きな菓子なので全ての店の商品を食べ比べてみようと思っていた。試食してみて舌に合わなければ何も買わないつもりでいる。昨日、手始めに三ッ山羊羹本舗の本練りなど数種類を試食した。期待していた味には物足りなかったが、高価な本練りを買ってかえった。というのも店主がとても気持ちのよい人物だったからだ。


2016年2月13日() 一週間ほどケータイが使えないことになった
 各地からフクジュソウやセツブンソウの便りが届き始めた。いずれも石灰岩地でよく見られる植物ゆえ花の観賞を兼ねて石灰岩生のキノコを探してみようと、比較的近場の石灰岩地域を訪ねた。日光市に隣接する鹿沼市では「子ども泣き相撲」で有名な生子神社に寄ってから(a)、御嶽山神社に行った(b)。神社の境内ではフクジュソウとセツブンソウを楽しんだ(d〜f)。
 神社裏手の登山道から北辰ヶ嶽御嶽山の登山道に入った(c)。登山道は石灰岩の転がる杉植林の細径が高みへ続いている。目的のキノコは空振りだったが、ヒメシロカイメンタケ(i, j)とシックイタケ(k, l)が周囲の杉に多数ついていた。栃木市の四季の森 星野ではセツブンソウはほとんど咲いていなかったが、すっかり乾燥しきったヒメモグサタケが見られた(g, h)。
 
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 ケータイが全く反応しなくなった。auショップに持ち込むと電池寿命か基盤損傷だろうという。10年前の古い機種ゆえ基盤がダメになっていれば機種交換しかない。店にバッテリーが届くまでの1週間はケータイが使えない。最悪の場合は新機種を購入せねばならない。
 栃木市からの帰路、例幣使街道の「野点庵」で蕎麦を食べた。概して日光には安くて美味い蕎麦屋が多い。しかし、大部分の店がさらしな系の蕎麦でいなか蕎麦の好きな者には物足りない。野点庵の蕎麦はいなか蕎麦で、汁との組み合わせが絶妙でとても美味かった。

 昨日の雑記「橙色の小粒:何の子実体だろう」として扱った菌類は、かつて不完全菌類として扱われてきたTuberclaria属(和名なし)の子実体のようだ。この属は分生子座菌科の標準属とされ、果樹類の胴枯れを引き起こす菌らしい。テレオモルフは子嚢菌のNectria属菌で古くから植物病原菌として研究されてきた。林業関係者の間ではよく知られる病害菌らしい。神奈川のSさんからのご指摘でTuberclaria属だと気づいた。Sさんありがとうございます。



2016年2月12日(金) 橙色の小粒:何の子実体だろう
 落枝に橙色のやや硬い塊が多数着いていた(a)。ヒイロタケかヒメアカコブタケの幼菌のように見えたが、手にとってルーペで見るといずれでもない(b)。何かわからないがきのこの仲間だろうと思って持ち帰っていた。切断しても子実層らしきものが見当たらなかった(c, d)。
 子実体はいくつかが癒着しているようだが、基本的には長径が8〜12mmほどの豆粒状のようだ(c)。カバーグラスの上に数時間放置しておいたところ、胞子らしき物が多数落ちた(e)。メルツァー試薬で封入すると非アミロイドだった(f)。子実体を薄切りにして顕微鏡で見たが、やはり子実層はない(g)。子実体の基部付近には菌糸のようなものが放射状に伸びている(h)。
 改めて子実体の薄片を切り出してよく見れば、胞子状のものと菌糸状のものが放射状に整然と並んでいる(i)。さらにシンポデュロ型かポロ型のような分生子形成の構造も見えた(j)。胞子のように見えていたのは分生子らしい。硬質菌を観察するときのように子実体から微小部分をつまみ出してフロキシン・消しゴム法でバラすと、無数の分生子と隔壁を持った菌糸がみえる(k, l)。少なくともテレオモルフ(有性時代)のキノコではなさそうだ。

[補足:2016.2.13] これはかつて不完全菌類として扱われてきたTuberclaria属(和名なし)の子実体のようだ。この属は分生子座菌科の標準属とされ、果樹類の胴枯れを引き起こす菌らしい。テレオモルフは子嚢菌のNectria属菌で古くから植物病原菌として研究されてきた。林業関係者の間ではよく知られる病害菌らしい。神奈川のSさんからのご指摘でTuberclaria属だと気づいた。Sさんありがとうございます。
 

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 昨日は終日快晴で山がとても鮮やかに見えていた。日中は気温もかなり上がって周辺の多くで雪が消えた。でも自宅前の市道は終日日陰のためか、いまだに雪と氷が歩行を邪魔している。玄関脇地所(万年不在?)の竹が自宅の側に大きく倒れて邪魔だったので切り除いた。


2016年2月11日() ニクハリタケ:針の全周にわたってシスチジア
 真岡市の都市公園で古い広葉樹の伐採木に大型のSteccherinum(ニクハリタケ属)の仲間が多数着いていた(a〜g)。カサ表面には毛のあるものもあれば、ほとんど毛のないものもある。いずれにせよこの仲間の子実層托の針は独特で特徴的だ(e〜i)。ルーペで針の部分を拡大してみると、なんとなく針全体にわたってシスチジアがあるように見える(j)。
 針の部分をやや薄切りにして顕微鏡で覗いてみた。針の先端部だけではなく、全体にわたってシスチジアが多数ある(k)。フロキシンで染めてもみた(l)。倍率を上げていくと、シスチジアの上半部は粒状結晶を帯びている(m〜o)。菌糸構造は二菌糸型のようだ(p)。シスチジアは紡錘形をしている(q)。原菌糸をいくら探してもクランプは見つからなかった(r)。
 保育社図鑑(II)によれば、ニクハリタケ(S. ochraceum)ということになる。胞子は見つからなかったが、そのほかの記述をみると観察結果とほぼ符合する。肉眼的にはよく似たアラゲニクハリタケでは、シスチジアは針の先端付近にだけあって、形も紡錘型ではなく混紡型をしているという。また明瞭な下皮があるとされる。保育社図鑑ではクランプのことには触れていないが、一部の図鑑によれば、ニクハリタケにもアラゲニクハリタケにも、原菌糸にはクランプがあるという。しかし、ここで観察したニクハリタケに関していえば、複数の子実体ついて、カサ肉や毛、針など各部をいろいろと探してみたが、どこにもクランプはみつからなかった。
 
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 今朝4:00の外気温はマイナス6度。昨日は県立博物館で楽しいひとときを過ごした。カベンタケの名で4〜5点の標本があったので、検鏡してその全てが子嚢菌のカベンタケモドキであることを確認して訂正を加えた。学芸員の皆さん、お世話になりました。ありがとうございました。


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