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2016年8月10日(水) ヒロハチャチチタケ:乳液が褐色から血の色に
 先週土曜日(8/6)に鬼怒川遊歩道で(a〜c)、日曜日(8/7)に日光だいや川公園で(d〜f)、ヒロハチャチチタケを採取した。なお(a),(b)の柄はカビに侵されていた。子実体を傷つけると褐色の乳液を出しやがて血の色に変色する。切断直後(e)とそれから5分後(f)の姿を提示した。
 このきのこについての詳細はMycoscience 47巻4号(2006)の232-234ページに短報として記されている。新種としての最初の報告は第38回日本菌学会の大会(1994)で発表されたようだが、その時から12年を経た2006年に改めてラテン語記載を加えて「有効な記載」として発表されたものらしい。同誌の図版のページ(pdfファイル)をここに引用しておいた。
 ヒダの縁にある組織はフロキシンで染めなくても特徴的で明瞭だが(i, k)、ヒダ側面の子実層にあるシスチジア(pleuromacrocystidia)は分かりにくく(l)、ヒダの薄切りができずにうまく捉えられなかった。それにしてもこのきのこ、傷つけた時の乳液の変色にはドキッとさせられる。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(d)
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(e)
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(f)
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(g)
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(h)
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(i)
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(j)
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(n)
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(o)
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(p)
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(q)
(q)
(r)
(r)
(a〜c) 鬼怒川の子実体、(d〜f) 日光ダイヤ川公園の子実体、(e) 切断直後、(f) 切断5分後、(g) 胞子、(h) ヒダ断面、(i) ヒダ先端、(j) ヒダ側面、(k〜n) フロキシン染色、(k) ヒダ先端、(l) ヒダ側面、(m) ヒダ先端拡大、(n) 担子器、(o) カサ表皮断面、(p) カサ上表皮、(q) 柄の断面、(r) 柄の表皮

 昨日の暑さはこの夏一番だったらしい。日中は確かにとても暑かった。午前中に湯葉の買い出しに鹿沼市まで行っただけで、きのこ観察のための散策はひさしぶりに休息日とした。


2016年8月9日(火) オオイチョウタケとシロケシメジモドキの大群落
 中禅寺湖畔の菖蒲が浜から湖畔を熊窪まで歩き、高山峠を越えて竜頭の滝まで遊歩道を散策した。足元にはシロケシメジモドキ(青木仮称)がいたるところで群落を作っていた(a, b)。さらに進むと遊歩道やらすぐ脇の急斜面に大きな白い塊があちこちに見えた。近寄るとオオイチョウタケの大群落だった(c, d)。20〜40個からなる群れが10数か所に広がっていた。
 次に多かったのがシミタケだった。幼菌から老菌まで数か所で計100個以上みられた。若い菌に指先で触れるとそのまま指紋型のシミとなった(e)。面白半分に切ってみた(f)。成菌や小さな幼菌は「キノコのフォトアルバム」に掲載した。
 ほかにも多くのきのこにであったが、それらのうちから6点ほど取り上げた。ハナビラタケ(g)やらオオワライタケ(h)がまだ出ていた。ツノシメジ(j)やヒメベニテングタケ(j)は今シーズン初めての出会いだった。キイボカサタケ(k)やカヤタケ型のきのこ(l)は少なかった。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(f)
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(g)
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(i)
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(k)
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(l)
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 湖畔の狭い遊歩道で小学生の大集団とすれ違って閉口した。道から外れた足場の悪い場所に7〜8分ほどじっとしているしかなかった。「こんにちは」の連呼には本当にくたびれた。きのこの撮影をしているときに出会わなかったのが不幸中の幸いだった。


2016年8月8日(月) きのこは少なくなったが・・・
 一昨日の鬼怒川遊歩道では少し前に萎れて倒れてしまったヒメスッポンタケ(a)やらヒロハチャチチタケなどもあった。そして近くの日光だいや川公園では、転居してから初めてシロオニタケに出会った(b)。おりしもヤグラタケが最盛期らしくあちこちで多数見かけた(c, d)。
 クロカワがみられたが、連日の乾燥のためか成長までに長い時間がかかったのだろう。成菌になったときには虫に食われて内部はスカスカになっていた(e, f)。シワチャヤマイグチがまだ出続けている(g, h)。アメリカウラベニイロガワリが再び出てきた(i, j)。フジウスタケに似たきのこが広葉樹下に出ていたが、これまたグアヤクチンキを滴下しても変色しない(雑記2016.8.5)。
 
(a)
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(b)
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(c)
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(j)
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(l)
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2016年8月7日() 朝の鬼怒川遊歩道散策にて
 鬼怒川遊歩道できのこの観察ができるのは観光客の少ない早朝だけだ。特に観光シーズン中の晴れた日には遊歩道に三脚を立てたりできるチャンスは少ない。特に休日の朝はたいてい団体客がやってくる。昨日束の間の散策の合間にいくつかのきのこを撮影した。
 ニガイグチモドキ(a, b)、サクラシメジ(c, d)、ニワタケ(e, f)、ツエタケ(g)、アカイボカサタケ(h)、キイボカサタケ(i)、シロヤマイグチ?(j)、チチタケ(k)、アカヤマドリ(l)などに出会えた。ウコンハツやテングタケ属、フウセンタケ属などにも出会ったが、観察したり撮影したりできるチャンスはなかった。予想外に早くに中国からの団体客がバスでやってきて、道幅いっぱいに広がって大声で喋りながら歩くので、観察や撮影などはあきらめた。
 
(a)
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(c)
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(e)
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(i)
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(k)
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(l)
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 夕方からは日光だいや川花火大会に出かけた。花火の打ち上げ数などは東京の隅田川や荒川花火大会の四分の一程度だが、十分に楽しめた。


2016年8月6日() 久しぶりにアセタケ属の検鏡写真を撮った
 日光だいや川公園にはこの時期、多くの種類のInocybe(アセタケ属)がみられる。たまに持ち帰っても最近は胞子とシスチジアなどを見て種名を判断する手がかりを得ると、そのまま庭に捨ててしまってきた。むろん顕微鏡写真などは撮影しない。
 今回は久しぶりに顕微鏡写真も撮った。あくまでも同定目的にポイントを絞って検鏡しそれを撮影したので、大部分が「わかればよい」という画像となっている。ヒダの断面(e)の先端部を拡大すると薄膜棍棒状のシスチジアが群れている(f)。縁シスチジアをフロキシンで染めた(h, i)。担子器の基部にはクランプがある(j)。カサ上表皮は平行に菌糸が走っている(k, l)。
 これらの結果などからオオキヌハダトマヤタケだと判断して、先の雑記にも種名を明示した(雑記2016.8.4)。アセタケ属は絵合わせだけでは種名にまで至れないものが多い。
 
(a)
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(c)
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(j)
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(l)
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 昨日は午前と午後に二回も宇都宮市まででかけてしまった。宇都宮市の都市公園にはどこもきのこの姿はほとんどない。ベニタケ属テングタケ属は少しみられるが、カビに侵されたり腐敗しきって悪臭を放つきのこがとても多い。今日は日光だいや川の花火大会。


2016年8月5日(金) 日光だいや川公園のきのこの続き
 昨日の続き。8月3日に日光だいや川公園で出会ったきのこだ。正確な同定ができなかったきのこも含めて画像を掲載した。ミヤマイロガワリによくにたイグチ(a, b)、ミドリニガイグチ(c, d)、アワタケ(e, f)、やけに色が黒いケロウジ(g, h)、アカハテングタケ(i, j)、フジウスタケによく似ているがグアヤクチンキで全く変色しないウスタケの仲間(k, l)。
 ヤグラタケがあちこちでみられるようになった(m)。シワチャヤマイグチはいまだに出ている(n)。オクヤマニガイグチは大部分がカビにやられ始めた(o, p)。白色で柄が綿くずに覆われたようなコトヒラシロテングタケ(q, r)。他にもチチタケやハタケシメジ、ツチカブリ、ケシロハツ、ケシロハツモドキなど多くのきのこが見られたが、これらは撮影も採取もしなかった。この日は7〜8種のみ採取して最低限の検鏡などをして同定に役立てた。標本は残さなかった。
 
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 昨日は奥日光を散策したが、きのこはタモギタケや汚れたハナガサタケやその幼菌くらいしかなかった。要するにきのこはほとんどない。早朝からいろは坂に車がやけに多いと思ったら第55回「扇の的弓道大会」の開催日だった(cf : YouTube)。会場の中禅寺湖畔周辺は大勢の人と車でとても込み合っていた。昼前に早々に奥日光を引き上げた。


2016年8月4日(木) 再び多くのきのこがでてきた
 一週間ぶりに近くの日光だいや川公園を歩いてみた。白色系のチチタケ属とベニタケ属が褐色になって至る所に群生していた。遊歩道を歩いていると、腐敗したきのこの異臭が凄まじい。最近新たに発生したばかりのきのこも多数見られた。遊歩道の周辺だけで50〜60種ほどを確認できた。そのうちの一部を今日と明日の雑記に掲載することにした。
 気まぐれに掲載した写真は、シャカシメジ(a, b)、キシメジ(c, d)、クロカワ(e, f)、アンズタケ(g, h)、ムレオオイチョウタケ(i, j)、ヒスイガサ(フカミドリヤマタケ)(k, l)、オオキヌハダトマヤタケ(m, n)、ヒカゲシビレタケ(o, p)、キツネタケの仲間(q, r)。ただし、ヒスイガサは多くの人がそう呼んでいる仮称、クロカワは既に傷み始めていた。ヒカゲシビレタケは姿形から、つまり絵合わせでそう認識することにした。キツネタケの仲間はどのような種名に落ちるのかわからない。
 
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 朝の7:15頃から10:30頃まで遊歩道だけを歩いたが、遊歩道から離れた林の中にはチダケ狩りの人が多数歩き回っていた。そのうちの一人に聞くと、朝6:30頃から既に2時間ほど歩いているが20数本しか取れなかったという。かなり競争が激しいようだ。
 メインパソコンのWindows10が突然反応しなくなった。リカバリーなど試みはすべて無駄だった。そこであきらめてゼロからクリーンインストールをした。元の環境を回復できるまでには10日ほどかかりそうだ。今日の雑記は予備PCのUbuntu Linuxからアップした。


2016年8月3日(水) 未熟だったテングノメシガイの仲間
 先日古峰ヶ原の勝雲山で出会ったテングノメシガイ属はチョウチンゴケなど蘚類の間からでていた。かなり大きかったので当然成熟しているだろうと思い採取した。
 子実体頭部には剛毛はなく、飛び出した胞子が無数に表面をおおい(d)、柄表面は微毛に覆われていた(e)。一時間ほどカバーグラスの上に転がしておくと、多数の胞子が落ちた。
 子実層を切り出すと剛毛はなく(g, h)、側糸の先端は軽く膨大しているだけで、これといった特徴は見られない(h)。この仲間はみな子嚢先端はアミロイド(i, j)。ごく一部に隔壁のできた胞子も見られたが、隔壁の数が4つだったり7つで気泡を含みいずれも未成熟だった。
 観察の結果Trichoglossum(テングノメシガイ属)ではなくGeoglossum(ヒメテングノメシガイ属)であるということまではわかるがそれ以上はわからない。
 
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 昨日の午前中はプリウスのリコール処理のため、(株)栃木トヨタで半日を過ごした。
 昨年12月に『ラテン語とギリシア語を同時に学ぶ』を取り上げたが(雑記2015.12.20)、一通り読んでみて呆れるほどの誤植の多さにうんざりした。たかだか200ページの書に100ヶ所の誤植。誰が悪いのかわからないが、購入すべきではない書籍と訂正せざるを得ない。


2016年8月2日(火) なんでもかんでもとにかく縦断
 奥日光、川治、川俣、湯西川方面はどこに行ってもすっかり乾燥していてきのこは非常に少ない。そこで高原山にある尚仁沢湧水群への遊歩道を歩いてみた。ベニタケ属、チチタケ属、アセタケ属、テングタケ属のきのこがいろいろ出ていた。いくつかを採取して帰った。
 ここではタマゴタケ(a〜e)、ホオベニタケ(f〜h)、キツネノロウソク(i〜l)だけを取り上げた。何をしたかというと、いくつかの成長段階のものなどを掘り出して、その場でとにかく縦切りにしてみた。キツネノロウソク以外は成菌を避けて幼菌だけを縦断した。
 
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 尚仁沢湧水群への遊歩道は昨年9月の豪雨被害ですっかり荒れ果てていたが、今ではすっかり整備され安心して歩けるようになった。急斜面の鎖は取り替えられ、階段の手すりは新しく作り変えられ、樹の根が入り組んで露出して歩きにくかった場所には砂利が敷かれた。


2016年8月1日(月) 鬼怒川上流四ダム見学会
 7月21〜31日は「森と湖に親しむ旬間」で、最終日の31日(日)は鬼怒川上流にある四つのダムの見学会が行われた。各ダムは年代も形式も規模も異なり、五十里ダムはできてから60年、川俣ダムは50年、川治ダムは33年、湯西川ダムはできてからまだ4年。
 朝8:40頃に五十里ダムに到着した。予定時刻前だったが見学できることになり、ヘルメットを被りエレベータに乗った。ふだん入ることのできない堤体内(監査廊)を歩き(b)、ダムの中間部から外に出たり底に降りたり、放流ゲート操作棟の内部などを見学できた(a〜c)。外気温は摂氏28度あり暑かったが、堤体内部は摂氏14度、湿度90%で寒いくらいだった。
 重力式ダムの五十里ダムや湯西川ダム(g〜i)に対して、川治ダム(d〜f)はアーチ式ダムで曲線が美しい。湯西川ダムは新しいだけあって設備や構造が最新式だった。ダムカレーのライスにはその形が反映されている。夏休み中の日曜日とあって、ダム見学を目的に首都圏からも多くのクルマがやってきていて、ふだんは静かなダム界隈がとても賑わっていた。
 
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 四つのダムのうち川俣ダムには行かず湯西川ダムから安が森キャンプ場に向かった。ダム湖の水位はふだんより15〜18mほど低く(j)、湖底に沈んだ旧道や森の跡が無残な姿を晒していた(k)。安が森林道は相変わらず不通のまま。キャンプ場周辺はすっかり乾燥していて、きのこの姿はほとんど見られなかった。ここでUターンしてすごすご戻って自宅で昼食をとった(l)。


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